国際競争力を高める目的で、海外の大学との連携や世界的レベルの研究に取り組める大学になるためにと、国が重点的に『スーパーグローバルスクール』計画を支援することを表明しました。
そして昨年、政府の教育再生実行会議が提唱したこれらの政策を受けて、今年初めて、そのための選考が実施され、9月に文部科学省から、全国から37校を選出したとの発表がありました。
『スーパーグローバルスクール』の基本として掲げられている選出条件は、まず、「世界で勝てる研究や国際化に向けた留学増などに取り組む」ということです。
国をあげ文部科学省が率先して、日本の大学を国際社会で埋没させないため、官民共通の願いのもと推進する事業として奨励していますが、大学間の格差がますます広がっていくことを懸念する声も一方ではあがっているようです。
賛否両論を含んだシーソーゲームのような『スーパーグローバルスクール』選出の行方を、朝日新聞9/27付・掲載の記事『目指せ 世界級の大学』から抜粋編集し、今月の「めーるきっず」通信で、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
今回の選考に当たっては、大学教員で作る審査部会が書類審査と面接を実施し、「外国籍の教員の割合」「英語による授業の設置」などの41項目を共通指標として検討しました。選考の結果、「トップ型」に選考された大学には、今後10年間、毎年最大で5億円、さらにまた、「牽引型」では、最大3億円の支援金の支給が約束されることになります。
ちなみ今回の応募総数は、全国から104大学に及び、そのうちこの難関を突破したのは37校でした。
それでは、いよいよ審査結果を発表します。
●『スーパーグローバル』大学に選考された37校●
世界ランキング100校以内をめざす「トップ型」大学
私立 慶応義塾大学 早稲田
国立 北海道 東京 東北 京都 名古屋 大阪 九州(帝)
筑波 東京医科歯科 東京工業 広島
全13校のうち旧帝大が7校、このうち、名古屋大学では、アジア各国に行政官などを対象に、現地キャンパスで博士過程開設する。また、東京工業大では学部・大学院を一体化した「学院」を新設する。
日本の国際競争力向上に貢献する「グローバル化牽引型」
私立 国際基督教大学 芝浦工業大 上智 東洋 法政 明治 立教 創価 立命館 関西学院
国際(新潟県) 立命館アジア太平洋(大分県)(地)
国立 千葉 東京芸術 東京外語 京都工芸繊維
長岡技術科学(新潟県)
奈良先端科学技術大学院(奈良県)
豊橋技術科学(愛知県) 金沢 岡山 熊本(地)
公立 会津(福島県) 国際教養(秋田県)
全24校のうち私立が12校、地方大学が10校と健闘している。
東京外語大では、多言語グローバル人材養成プランを打ち出し、京都工芸繊維大は、京都ならではの独自性を活かして、伝統工房での学習などにより国際高度技術者の養成に取り組む。
秋田の国際教養大では、学生アパートに「メディアハウス」「Diplomat(外交官)ハウス」などのテーマ別ハウスを導入する。
今回、選ばれた37校のうち、「世界の大学ランキングで、100位以内を目指す」という『トップ型』13校には、旧帝大を中心にした、いわゆる難関校が並びました。
東大は、「世界トップレベルの研究型総合大」を掲げて、海外大学との共同研究や、英語で取得する学位の拡充などを打ち出しています。
また、京都大も同様に、世界ランキン10位を目標に、世界をリードする研究者の任用増を揚げています。
しかし、皮肉にも現状では、東大が世界ランキング23位、京都大は52位と、日本の大学の国際的な存在感は極めて薄いです。
国が「大学の国際化」を支援する背景には、この国際的な存在の薄さにもあると言えます。
今後10年間で、世界ランキング100位以内に10校は入るという政府目標は、これによって「日本の教育や研究」の底上げにつながるというのが、その理由なのです。
もちろん、これらの目標は産業界の悲願でもあり、企業がつくる産業競争力会議が、大学の国際化を全面バックアップで支援しています。
今回の選考で、明暗が分かれた日本の大学の現状ですが、「国際化」に対する姿勢や、取り組みが、今回の選考によって明確になったのも事実です。
例えば、規模や予算などから「国際化」が難しい大学の手本にもなるような、個性的な取り組みやアイディアが評価されたこともにも注目が集まりました。
17歳での「飛び入学」を実施している大学や、卒業までに3回留学するというプログラム、国連への国際ボランティア派遣を通じて国際的に通用する人材を育てる、世界で通用するICT(情報通信技術)人材の輩出、起業家精神を養う講座の創立など。
今回の記事を整理してみて、改めて「学ぶ」ことの意味を考えてみました。読み進めていくうちに、未来の「大学」だからこそ、そこで何を学び、何を具現化したいのかという、「学び」の価値や意味が問われているような気がしてならないのですが、みなさんはいかがでしょうか?
実は、私自身も、かつて海外の大学で学んだことがあります。
当時、世界でたった一カ所、自分の専門性を磨く可能性がそこにあったからこその留学でした。
一旦、社会に出てから、また、チャンスがあり、学び直した経験があるから、「大学」であるならばなおのこと、あえて厳しい言い方をすれば、「学び」に対して、明確な答えが見いだせないなら、そこでは魅力的な経験は期待できないという気がしています。
今回の選考に関して、前述しましたように、大学間の格差が広がることに対して懸念する声も上がっていますし、選考に対し、準備期間が短か過ぎて、既存の事業をつなぎ合わせた構想だったとの指摘もあります。
賛否両論はともかくとして、「スーパーグローバル」のお墨付きを得た大学は、先ずは率先してグローバル化の実践に向かって邁進して欲しいと思いますし、今回、選からもれてしまった大学であっても、今後、生徒募集や予算面での苦しさがあるものの、だからこそもっと自由に独自性を発揮して、躊躇することなく、思う存分、世界を駆け巡ることができる大学であって欲しいと思います。
大学の名前だけにとらわれることなく、何を学んだかは、きっと将来、その人の財産になるだろうと思うからです。
もっともっとたくさん、世界で学ぶ未来の人たちが増えること。また、それと同時に、日本で学びたいと願うさまざまな海外からの学生たちにも門戸が開らかれていくことも祈りたいです。
環境は与えられるだけでなく、自らが創っていくもの~という言葉を聞いたことがあります。 条件が整っているから大丈夫と思うのは危険です。
「学び」は、自らが欲するところにこそ、完成していくものではないでしょうか??
世界へとつながる「グローバルな学び」、まだまだ奥深いテーマですね。
たちのゆみこ