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2016年の感謝をこめて

2016年も、気がつけばあっという間に通り過ぎようとしています。
私の今年の年明けは、久しぶりに雪のミュンヘンで迎えました。
大学時代の恩師・アンダリック先生も、83歳のご高齢ですが、まだまだ現役で活躍中と聞き、急に先生に会ってみたくなり、昨年末からの3週間、荷物をまとめ、ミュンヘンへ飛びました。

大好きな飛行機に乗りミュンヘンに降り立った途端、一瞬にして留学時代の自分に戻ったような気持ちで、2016年を迎えたことを思い出します。

毎年のことですが、一年を振り返ってみて、自分の生き方の基軸となるものを、いつまでも心の中に持っていられるのは幸せなことだという思いです。

振り返れば今年も、自然災害だけでなく、予想を遥かに越える思いがけない出来事との遭遇など、失ったものや、目の前から消えてしまった人たちの記憶がたくさんあります。
しかし、幸いにもその一方では、それらの大きな痛み以上に、たくさんの新しい生命との出会いもあれば、喜びや感謝を持って巡り会えた人たちや、さまざまな新たな課題と取り組めた手応えもありました。

そんなこんなの思いが、たくさん詰まった2016年でしたが、みなさまは、いかがでしたでしょうか??

それでは改めまして、2016年を締めくくります『めーるきっず100ぷらす Vol.3』を、みなさまにお届けし、今年最後のご挨拶にしたいと思いますので、お楽しみください。

今回の『めーるきっず100ぷらす Vol.3』は、私の中でのヒットの1冊を、ご紹介したいと思います。

『植物はなぜ動かないのか』ちくまプリー新書
ー弱くて強い植物のはなしー 稲垣 栄洋 著

まず、この本の帯には、こんなことが書かれています。
「自然界と言えば、『弱肉強食』の厳しい社会だが、弱そうに見えるたくさんの動植物たちが、優れた戦略を駆使して自然を謳歌している。植物たちの豊かな生き方を楽しく学ぼう」と。

著者の稲垣栄洋氏は、農学博士で静岡大学院教授です。
農業研究の傍ら、雑草や昆虫などの、身近な生き物についての講演をされていますが、特に、この本は、若い人たちを意識して、著者自身が植物から教えられたことを、伝えたいとの思いで書かれたものです。

それでは、その内容の一部ご紹介します。

稲垣さんは、「植物と話しをするというと気持ち悪いと思われるかもしれません。また、オジさん臭くてダサいと思うかもしれません。
しかし、生きることに迷ったら、ぜひ、弱くとも強く生きる植物を見上げてみても、悪くないと思います」と。

そして、さらに、この本の文末に書かれた言葉には、「生物学は、暗記科目という印象が強いかもしれない。確かに生物学は覚えなければならないことが多い。計算すれば答えがでるという科目でもない。しかし、競争を勝ち抜き、環境の変化を生き残ってきた生き物の生き方というのは、じつに合理的である。みなさんが暗記する生物学の事柄には、すべて合理的な意味があるのである。その理由がわかれば、生物学はむやみに暗記する科目ではないことがわかるだろう。残念なことに、生物学の中でも、植物学はとくに人気がないようだ。昆虫や魚や鳥や動物たちは、ダイナミックな暮らしぶりを見せるから、人気がある。これに対して植物は動くこともなく、何となく生きているように見えるかもしれない。しかし、動けない植物の暮らしこそ、本当は、ダイナミックでドラマチックかもしれない」と。

稲垣さんは、38億年前に地球上に最初の生命体が生まれたときには、植物も動物も、互いにその区別がなかったにもかかわらず、互いが袂を分け合ってそれぞれの道を歩んで来た生命の不思議を、植物の生き方になぞらえながら語っておられます。

例えば、ギリシャ哲学者のアリストテレスは、『植物は逆立ちした人間(動物)である』と、言ったそうです。
なぜなら、私たちは栄養を摂る口は上半身にあるが、植物は栄養を摂るのは下半身にあるからで、さらにまた、生殖器官も、真逆で、花は上半身に、人は下半身にあります。
このように、植物と人間(動物)は、まったくの正反対の生物なのです。
では、植物は、いかにして「植物」になったのでしょうか?
このことを考えるには、まず、「植物」は、なぜ動かないのかを考えてみると、そこに大きなヒントがありそうなのです。

ひと言でいうと、植物は自分で栄養を作ることができるので、動物のように動き回る必要がないからなのです。
しかし、ときには「動かない」ではなく、「動けない」もありますが、総体的に、植物は『固着性』という特有の性質から、そこがどのような場所であっても、移動せずに、その場で変化をくり返しながら、縦に伸びたり、横に枝を伸ばしたり、形もさまざまに、環境に合わせて変化させながら成長しているのです。
そしてまた、植物は動けないから、逃げることなく環境を受け入れて、自分自身を変えているというのです。
言い換えれば、動物なら敵が来れば逃げることもでき、居心地が悪ければ、より適正な場所へと移動も可能ですが、植物は、そこが、どんな場所であっても移動することなく生き続けるのです。

稲垣さんは、そんな植物の習性をみながら、動けないから、逃げることもなく環境を受け入れ、与えられた場所で、自分自身を変えてでも生きるという植物の生き方に、現代社会にも通じる、植物の頼もしさを感じておられます。

また、地球に生命体が誕生した38億年前から、生命体は、ずっと海の中で進化を遂げてきました。
陸上に生える植物は、およそ4億7000万年前に進出したと考えられていますが、コケ植物からはじまり、それぞれに進化を遂げながらシダの森林や、果物をつける被子植物の登場までの歴史があります。
現在のように、植物が花や実をつけるようになったのは、共生関係を築いた昆虫や鳥、哺乳類たちへの戦略的な発明だったと言われ、要するに、植物は「食べられる」ことで、成功したのです。
それは、植物が厳しい自然界の競争の果てに、『食べられること』=『共存』、すなわち、昆虫や鳥が、花粉を運び、分布を広げていく中で、生きる手段を見いだし、他の生命体と助け合って生きる方法を身につけていったのです。

お互いが助け合う共生関係のために、植物は昆虫に花粉を与え、蜜を与え、そして、鳥たちには、甘い果実を用意しました。
結果的に自分の利益よりも、まず相手の利益のために「与えること」、それが、現在に至るまで生き残る共生関係を築かせたのです。

植物は、「与えよ、さらば与えられん」の境地を、今日まで永く持ち続けて、地球上にその生命体を繁栄させているのです。

動けないからこそ、その土地で芽生えれば、その場所で生きるしかない。だから、環境に文句を言っても環境は変わらない。
しかし、環境は変わらないからこそ、自分自身が変わるしかないことを知っていて、環境をありのまま受け入れることで、さまざまな進化を遂げてきたのです。

植物は、決して弱いだけの存在ではないというのが、稲垣さんからのメッセージです。
そして、どんな生き物もナンバー1になれると、稲垣さんは植物の生き方を通して、条件をずらしながらでも、あきらめるのではなく、自らの適切な生きる場所を見つけている植物の偉大さに共感されています。
・・・と、ここまで、紙面の都合上、ほんの一部しかご紹介できませんが、みなさんは、植物の生き方から、何を学ぶことができるでしょうか?

私自身、この本を読み進めていくうちに、決して簡単ではない日々の生き方を、再度、見直してみたらと痛感しました。

以下、各章には、さまざまな植物の特性や営みが綴られています。

  • 第一章  植物はどうして動かない?
  • 第二章  植物という生き物はどのように生まれたのか?
  • 第三章  どうして恐竜は滅んだのか?
  • 第四章  植物は食べられ放題なのか?
  • 第五章  生き物にとって「強さ」とは何か?
  • 第六章  植物は乾燥にどう打ち克つのか?
  • 第七章  雑草は本当にたくましいのか?
 

今年もたくさんの『ありがとう』を、みなさまに送りたいです。
そして、来年も、たくさんの『ありがとう』に出会えることを祈りつつ、感謝の気持ちで2016年を締めくくりたいと思います。

♪♪Happy New Year 2017 〜♪♪

たちのゆみこ